「防音テープを貼れば、賃貸の部屋は少しは静かになるのか」。気になってはいたものの、ずっと半信半疑でした。そこで、築20年超の賃貸マンションの玄関ドアと窓で、市販のテープを3種類、半年ほどかけて実際に試してみました。この記事は、その検証の記録です。
先に結論だけ言っておくと、防音テープは「隙間から入る音」にはそれなりに効きましたが、「壁や床を伝わる音」にはまったく効きませんでした。だから買う前にいちばん大事なのは、自分の悩みが隙間由来かどうかを見分けることです。
試す前の状態(ビフォー)

スタート時点のうちの状況はこうでした。玄関ドアの下に数mmの隙間があって、夜になると廊下の話し声やエレベーターの音が、そこからうっすら入ってきます。手をかざすと、かすかに空気の動きを感じるくらいの隙間でした。窓のほうはサッシのゴムが少しへたっていて、閉めても外の車の音が小さく聞こえます。
その一方で、隣室のテレビ音は壁越しにいつも聞こえていて、これは隙間とは関係なさそうだと薄々感じていました。つまり「隙間っぽい音」と「壁っぽい音」が混ざっている状態です。

テープで変わるとしたら前者だろう、という見当をつけてから始めました。
検証①:100円ショップのスポンジテープ
最初に試したのは、100円ショップのウレタンスポンジテープです。玄関ドアの下と縦の隙間に貼ってみました。貼った直後は、廊下の音が「少しこもったかな」という程度にやわらいだ実感があります。
ただ、1か月ほどでスポンジがへたって潰れ、隙間がほぼ元どおりに戻ってしまいました。安さは魅力ですが、ドアのように毎日開け閉めする場所には耐久性が足りなかったようです。
おもしろいのは、開閉のほとんどない窓のほうは、同じ100均スポンジでも今のところ問題なくもっていること。同じテープでも、貼る場所で寿命がまるで違いました。
検証②:エプトシーラー
次に試したのが、エプトシーラー(微細な独立気泡構造の高密度スポンジで、工業用の防振・シール材としても使われる素材)です。スポンジよりへたりにくいと聞いて期待したのですが、うちのドアの隙間に対しては厚みが合わず、貼るとドアが閉まりにくくなってしまって断念しました。
素材として優秀でも、隙間の寸法に合わなければ使えない、という当たり前のことを、ここで実感しました。買う前に隙間の厚みを測っておけばよかった、と少し反省したポイントです。
検証③:ゴム系D型テープ
最終的に落ち着いたのが、ホームセンターで買ったゴム(EPDM)系のD型テープ(600円くらい)でした。EPDMは耐候性・耐久性にすぐれた合成ゴム素材で、断面がアルファベットの「D」の形になっていて、隙間に合わせて適度につぶれて密閉してくれます。
これに替えてから半年以上、へたらずに持っています。廊下の音は「積極的に聞こうとしなければ気にならない」程度まで下がりました。値段は100均の6倍ですが、何度も貼り替える手間を考えると、結果的にはこちらのほうが楽でした。
正直に言うと、静かになったといっても「無音」にはほど遠く、体感では「気にしなければ気づかない」くらいです。隲間対策で変わるのはその程度、と最初に分かっていれば、過度な期待をせずに済んだと思います。
検証してわかった、効く音・効かない音

3種類を半年試して、はっきりしたことがあります。テープが効いたのは、ドア下の隙間から入る廊下の音と、窓のサッシのすき間風だけ。隣室のテレビ音や話し声は、テープを何種類替えてもまったく変わりませんでした。これは壁を伝わってくる音で、隙間とは関係がないからです。
自分の悩みがどちらに近いかは、テープを買う前にある程度たしかめられます。下の表が、そのときの見分けの目安です。
| 音のタイプ | 見分けのサイン | テープの効果 |
|---|---|---|
| 隙間由来 | ドアの下や横から風・光が漏れる/窓を閉めてもサッシから風が入る/音は「何となく聞こえる」程度 | 効く可能性あり |
| 構造由来 | 壁に耳をつけると会話の内容まで分かる/ドンドン・ドスンという振動を伴う/隙間がないのに聞こえる | 基本的に難しい |
うちが「壁の薄さ」に気づいたのは、テープを3種類試したあとでした。先にこの見分けをしていれば、ムダな買い物を1つは減らせたはずです。
気になっている音が上階や隣室の音で、隙間とは関係なさそうなら、音の感じ方や向き合い方を整理してみるのも、ひとつの選択肢になります。
テープにできること・できないこと
半年の検証で見えた、テープの守備範囲を整理しておきます。
できること
- ドアや窓の隙間を埋めて、そこから入る音を減らす
- 隙間風を減らして、冷暖房の効きを少し良くする
- ドアの開閉音(バタン)をやわらげる
できないこと
- 壁を通して伝わる音(隣室のテレビ・話し声・音楽)を遮る
- 床や天井を伝わる振動(足音・洗濯機)を止める
- 「静かな部屋」をつくる
MUTE防音専科の解説でも、テープで期待できる減音効果は限定的だと説明されています。テープは「隙間由来の音」への部分的な対処であって、壁・床・天井を通る音には基本的に効きません。「完全な防音」を求めるならテープではない、と最初に割り切れると、選ぶのがぐっと楽になります。
防音専用をうたう製品(東京防音株式会社など)もありますが、まずは手近なもので十分でした。
選ぶときに見たのは3つだけ
テープを買うと決めた場合でも、比較に時間をかけすぎる必要はありませんでした。実際に見たのは次の3点だけです。
厚み:貼る場所の隙間に合っているか。厚すぎるとドアや窓が閉まらなくなります。窓なら3mm前後、ドアなら5〜6mmが目安でした。
素材:スポンジ(ウレタン)系は安いぶんへたりやすく、半年ほどで潰れることが多いです。ゴム(EPDM)系は少し硬めですが長持ちします。うちは窓は100均スポンジで十分でしたが、ドアはすぐへたったのでゴム系に替えました。
粘着力:賃貸なら、剥がしやすさも確かめておくと安心です。粘着が強すぎるものは、壁紙やサッシを傷めることがあります。
高いものほど効く、とは限りませんでした。まずは1箇所だけ試して、体感で確かめてから追加するかどうかを決めるのが、いちばんムダのない進め方だと思います。
あと、地味ですが、貼る前にドア枠のホコリと油分を乾拭きしておくと、粘着の持ちが目に見えて変わりました。ここを省くと、せっかくのゴム系でも早く剥がれてきます。
賃貸で試すとき、気をつけたこと
テープ自体はシンプルですが、検証中にやりがちな失敗もありました。厚みを確認せず重ね貼りしてドアが閉まらなくなる、粘着が強すぎて剥がすとき壁紙が心配になる、効果がないのに買い足し続ける(隙間が原因でなければ、増やしても変わりません)。どれも一度はやりかけました。
賃貸でとくに気になるのは、退去時の原状回復です。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、通常の使用範囲内なら借主の負担にはならないとされていますが、粘着跡や壁紙の剥がれはトラブルのもとになりがちです。
うちは管理会社に「テープを貼ってもいいか」と聞いてみたところ、「退去時に剥がしてくれればOK」とのことでした。ひとつ、やってよかったのは、先にマスキングテープを下に貼ってから防音テープを重ねたことです。あとで剥がすとき、粘着跡やサッシ・壁紙へのダメージがぐっと気楽になりました。
迷ったら先に確認しておくと気が楽ですし、賃貸でどこまで手を加えていいか自体に迷うなら、「触っていいライン」を先に把握しておくと落ち着いて動けます。
向いている人・向いていない人

半年の検証をふまえると、テープが向くのはこんな人でした。
- ドアや窓の隙間から、風や音が入ってきているのが分かる
- 築年数が経っていて、サッシやドア枠のゴムが劣化している
- 音を「完全に消す」のではなく、「気にならない程度」を目指せる
- まずは1箇所だけ試して、効果を確かめたい
逆に、次の場合はテープ以外を考えたほうがよさそうです。
- 音の原因が隙間ではなく、壁の薄さにある
- 振動系の音(足音・重低音)が主な悩み
- 「完全な防音」を求めている
テープでは足りないと感じたら、環境面の対応を業者に相談するかどうかの考え方に目を通してみるのもひとつです。
試すなら1箇所だけ、体感で判断すればいい。変化がなければ、テープでの対応はそこでやめていい。買わない・何もしないも、立派な検証結果のひとつです。3種類試して1つに落ち着いた今、いちばん伝えたいのは「自分の音が隙間由来か壁由来か、まず確かめてみて」ということでした。
音まわりの他の記事は「音・環境(生活音・設備音の切り分け)」にまとめています。

