夏の盛りにエアコンが急に冷えなくなる、あるいは異音がし始める。いざ業者を呼ぼうとして、賃貸だと一瞬ためらう人は多いはずです。
「勝手に頼んで、あとで費用はどうなるんだろう」。この誰が契約して、誰が払うのかがあいまいなまま進めると、修理そのものより、あとの費用負担のほうでこじれやすくなります。
エアコンや換気設備の修理・交換でいちばん先に見極めたいのは、契約書の細かい文言よりも、「その設備は誰のもので、誰が手配する立場か」です。この記事では、賃貸か持ち家か、備え付けか自分で付けた物かで分かれていく道を、順番にたどります。
賃貸なら、自分で業者を呼ぶ前に管理会社へ一本
ここまで来た人にまず伝えたいのは、賃貸で備え付けのエアコンが壊れたときは急いで自分で手配しなくていい、むしろ先に動かないほうがいいことが多い、ということです。順番としては、次のようになります。
- 備え付け(設備)なら、まず管理会社・大家へ連絡してから
- 自分で設置した物・前の入居者が残した物なら、扱いを管理会社に確認してから
- 持ち家なら、自分が契約主体。相見積もりと保証を確かめてから
この最初の一本を入れるだけで、「費用を誰が持つか」の土台が決まります。
誰が契約し、誰が払うのか(賃貸・持ち家フロー)
下の図は、住まいと設備の種類で「契約する人・費用の負担・最初の一手」がどう変わるかを一枚に整理したものです。自分がどの行にあたるかを見てから動くと、順番を間違えにくくなります。
※賃貸はまず管理会社へ一本。急いで自分で手配しなくて大丈夫です。設備か残置物かは契約書・重要事項説明書で確認できます。
賃貸で最初に分かれる道|そのエアコンは「設備」か「残置物」か
賃貸でまず確かめたいのは、そのエアコンが大家さんの用意した「設備」なのか、それ以外なのかという点。ここで契約主体も費用負担も変わってきます。
- 設備(備え付け):入居時から付いていて、契約書の設備欄に記載があるもの。原則として、修理・交換の手配と費用は貸主(大家)側の負担になるのが一般的です。だからこそ、自分で勝手に業者を呼ぶ前に、管理会社へ連絡するのが先になります。
- 残置物:前の入居者が置いていったエアコンを、貸主が「設備ではない」という扱いのまま引き継いでいる場合。このときは故障しても貸主に修理義務がないことがあり、契約によって扱いが分かれます。
- 自分で設置した物:自分で買って取り付けたエアコンは、当然こちらの持ち物。修理の契約主体も費用も自分になります。
設備と残置物のどちらなのかは、契約書か重要事項説明書で確認できます。
退去時の扱い(原状回復や、置いていっていいか)にも絡むため、国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドラインが、設備か残置物かを考えるときの下敷きになります。
貸主が動かないとき、借主にもできることがある
「設備なのに、大家がなかなか修理に動いてくれない」。そういうときのために、借主側にも手当てがあります。
2020年施行の改正民法では、賃貸物件の修繕が必要なのに貸主が相当の期間内に修繕しないときなどに、借主が自分で修繕して、その費用を請求できると定められています(民法607条の2)。かかった必要な費用の償還を貸主に求められる規定(民法608条)もあります。
ただし、これはいきなり使う手ではありません。まず管理会社・大家へ連絡し、やり取りの記録を残したうえで、それでも動かないときの備えとして知っておく、という順番です。
設備か残置物かで迷ったり、貸主とのやり取りがこじれそうなときは、住宅のトラブル相談を受け付けている住まいるダイヤル(0570-016-100)に、第三者の立場から相談できます。
「そもそもこれは今すぐ動くべき不具合なのか、週末まで様子を見ていいのか」で迷うときは、住宅トラブルの緊急度を仕分ける考え方もあわせてどうぞ。
我が家の場合|まず管理会社に一本入れたら、費用の話が先に片づいた
うちは賃貸で、数年前の夏にリビングのエアコンが効かなくなったことがありました。
すぐ修理業者を調べ始めたのですが、その前にひとまず管理会社へ電話したんです。すると「それは備え付けの設備なので、こちらで手配します」と返ってきました。

もし自分で先に呼んでいたら、費用を立て替えたうえで交渉になっていたはず。順番を変えただけで、ずいぶん気持ちが楽になりました。
築20年を超える部屋なので、設備も古く、交換か修理かで時間がかかるかと身構えていました。それでも契約書の設備欄を管理会社と一緒に確認できたことが、何より安心材料になりました。
ここまで、あなたは順番を間違えていません
エアコンが効かないのは生活にこたえますし、早く動きたくなるのが自然です。それでも「誰が頼むのか」をいったん確かめようとしている時点で、むしろ慎重に、正しい順番で進めています。
賃貸で管理会社に先に連絡するのは、遠回りではなく近道。自分ひとりで抱え込んで費用まで背負う必要はありません。頼る相手(大家・管理会社・業者)を正しく選ぶことも、立派な判断のひとつです。
持ち家・自分で設置した場合に、契約前に確かめたいこと

契約主体が自分になるとき(持ち家、または自分で付けたエアコン)は、次の3点を押さえておくと、致命的な失敗は避けやすくなります。
- 修理か交換か:使用年数が交換の目安を超えていれば、修理を繰り返すより交換が結局は安く済むこともあります(金額は幅で見る)
- 保証の切り分け:業者の施工保証と、本体のメーカー保証は別もの。どちらがいつまでかを確認
- 作業範囲と追加費用:高所作業・配管の延長・ガス補充などで追加が出ないか、見積もりの内訳で確認
価格だけで決めず、同じ条件で複数の業者に見積もりを取っておくと、相場感と作業範囲のずれが見えてきます。
契約のときに避けたいこと

- 賃貸なのに、管理会社へ連絡する前に自分で業者を手配してしまう
- 設備か残置物か(契約書の記載)を確かめずに進める
- 訪問や電話で「今日中に」と急かされ、その場で即決する
最後の点について、頼んでいないのに訪問や電話でエアコン工事を勧められた場合は、契約を急がなくて大丈夫です。訪問販売・電話勧誘での契約なら、書面を受け取った日から8日以内はクーリングオフ(一定期間内なら無条件で契約を解除できる制度)が使えることがあります。
断り方や初動は突然の訪問営業・電話で迫られたときにまとめています。
よくある質問
賃貸で、大家に無断で修理業者を呼んだら費用は出ない?
設備の場合、原則は貸主負担ですが、無断で手配すると「事前の連絡がなかった」として費用の扱いでもめることがあります。先に一本連絡を入れておくのが安全です。
エアコンが古くて修理できない。賃貸でも交換してもらえる?
設備であれば、貸主に修理・交換の義務があるのが一般的です。ただし設備かどうかで変わるので、契約書の設備欄を確認してから相談してみてください。
退去時、自分で付けたエアコンはどうすれば?
残していく(残置物にする)か撤去するかは、契約と貸主の意向で変わります。退去前に管理会社へ確認しておくと、原状回復の行き違いを防げます。
まとめ|今日決めなくていい

最後に、判断の軸を整理しておきます。
- 賃貸はまず「設備か、残置物か、自分の物か」。設備なら管理会社へ先に一本
- 貸主が動かないときの備えに、借主の修繕・費用請求の権利(民法607条の2・608条)
- 持ち家・自分の物なら、修理か交換か・保証・作業範囲を確かめてから
誰が契約する立場かが決まると、費用の話は驚くほど静かになります。急いで自分で抱える前に、ひとつ確かめるだけで十分です。今日決めなくても問題ありません。
暮らしの「どう動くか」で迷ったときの判断は、迷ったときの考え方を整理するページにまとめています。

