停電すると、水まで出なくなることがあります。マンションなどの集合住宅では、水を各部屋まで届けるポンプが電気で動いている建物が少なくないからです。
この記事が扱うのは、停電や断水が「いま起きている」ときの動き方です。備えの道具選びや、収まったあとの住まいの点検は別の記事に任せて、ここでは「何を見て、どこまで自分でやり、どこから管理会社に任せるか」だけを賃貸の目線で整理します。
停電・断水の「いま」から引く|状況別の原因の見当と最初の一手
窓の外も、近所も真っ暗
原因の見当:地域の停電
最初の一手 ブレーカーには触らず、送配電会社の停電情報で復旧の見込みを確認する。冷蔵庫は開けない
近所は明るいのに、自宅だけ暗い
原因の見当:分電盤のブレーカー
最初の一手 消費電力の大きい家電のプラグを抜いてから、決まった順番でブレーカーを戻す
電気はつくのに、水だけ出ない
原因の見当:自宅の止水栓/地域の断水/建物のポンプ
最初の一手 ほかの蛇口、近所、掲示を見る。建物側が疑わしければ管理会社へ
停電したら、水も出なくなった
原因の見当:停電で建物の給水ポンプが止まった
最初の一手 飲み水とトイレ用の水を先に確保し、管理会社に給水方式と非常用給水栓の有無を聞く
自分に当てはまる状況だけ、以下の該当箇所を読んでください。
近所も真っ暗なとき|地域の停電でやること

地域全体の停電では、待つあいだに迷いやすい場面が4つあります。確かめる順に見ていきます。
地域の停電かを確かめて、復旧の見込みを見る
窓から外を見て、近所の家の明かり・街灯・信号が消えていれば、地域全体の停電の可能性が高いと考えられます。この場合、原因は家の中にありません。自分で復旧させる手段もないので、やることは「情報の確認」と「待つあいだの安全確保」の2つです。
復旧の見込みは、地域の送配電会社(電線や電柱を管理し、停電時の復旧にあたる会社)が停電情報として公開しています。停電の連絡先は、検針票に載っている電力会社ではなく、お住まいのエリアの送配電会社になるのが一般的です。
東京エリアなら東京電力パワーグリッドの停電情報で地域と復旧の見込みを確認できます。ほかのエリアの方は、お住まいの送配電会社の同じようなページを探してみてください。
冷蔵庫の食品は、何時間まで大丈夫か
待つあいだ、いちばん判断に迷うのが冷蔵庫の中身です。農林水産省の食中毒の注意喚起ページによると、扉を開けない場合に低温を保てる時間は、冷蔵庫で約4時間、冷凍庫で約1〜2日間が目安です(気温や中身の量で変わります)。
同じページでは、傷みやすい肉・魚・惣菜は目安の時間を超えたら廃棄すること、完全に溶けた冷凍食品を再び凍らせるのは避けることも案内されています。においや見た目では判断しきれないので、迷ったら食べない側に倒すほうが安全です。
明かりの確保と、止まる設備
明かりは、スマホのライトかLEDの懐中電灯で足ります。ろうそくは、消し忘れや転倒が火事につながるので避けてください。スマホの電池は復旧情報の確認に使いたいので、ライトは懐中電灯を優先すると持ちがよくなります。
停電中に何が止まるかは建物によって違います。オートロックやインターホン、給湯器、IHコンロ、Wi-Fiルーターは止まることが多く、エレベーターが止まれば高層階の上り下りが大変になります。
気になる設備は、あとで管理会社に非常時の動きを聞いておくと安心です。
電気が戻ったあとと、避難するとき
地震や台風で停電した場合は、電気が戻ったあとに家の状態も確認します。見ていく順番は地震や台風のあとに家の中を見ていく順番にまとめています。
家を離れて避難するときは、ブレーカーを切ってから出てください。電気が戻ったとき、傷んだ配線や倒れた電気器具から出火する「通電火災」を防ぐためです。
停電したら水も出ない?|マンションの給水方式で変わる断水の出方
停電で水が止まるかどうかは、建物の給水方式で決まります。大阪市水道局の説明をもとに、3つの方式を整理しました。
| 給水方式 | しくみ | 停電したとき | 地域の配水管が断水したとき |
|---|---|---|---|
| 直結直圧式 | ポンプを使わず、配水管の水圧で蛇口まで届ける(大阪市では3階建てまで) | 配水管が無事なら、断水しない | 各戸も断水する |
| 直結増圧式 | 増圧ポンプ(水圧を上げる装置)をつけて、水道水を直接届ける | 水圧だけで届く2〜3階程度までの低層階は出る。中高層階は水圧不足で断水 | 各戸も断水する |
| 受水槽方式 | 水をいったん受水槽(建物のタンク)にためて、ポンプで各戸へ送る | ポンプが止まると、屋上の高架水槽(高い所にあるタンク)の水を使い切ったあとに断水 | ポンプが動いていれば、受水槽の水ですぐには断水しない |
階数の目安や運用は、自治体や建物によって違います。受水槽方式の建物では、停電でポンプが止まっても、配水管が断水していなければ使える「非常用給水栓」(応急給水用の蛇口)が設けられていることがあります。
自分の建物がどの方式かは、管理会社に聞くのがいちばん早いです。聞くのは2点だけで足ります。
- 給水方式は、受水槽・直結増圧・直結直圧のどれか
- 停電のときに使える非常用給水栓はあるか。あるなら場所はどこか
ほかにも手がかりはあります。受水槽は、年1回以上の清掃が必要です。そのため、清掃のたびに予告断水の貼り紙が出る建物なら、受水槽方式の目印のひとつになります。
地域は断水していないのに、停電のあとから水が出ない。そんなときは建物のポンプが止まったと考えるのが自然です。自分で業者を呼ぶ場面ではないので、管理会社に連絡して、待つあいだの水を確保しましょう。
自宅だけ停電のとき|ブレーカーを戻す順番と止める目安

近所は明るいのに自宅だけ暗いなら、分電盤(ブレーカーが並んだ箱)を見ます。使いすぎで落ちただけなら、消費電力の大きい家電のプラグを抜いてから戻すのが基本です。
戻す順番は、政府広報オンラインの案内では次のとおりです。
- すべてのブレーカーが「切」になっているか確かめる
- アンペアブレーカー(契約容量を超えると落ちる、いちばん大きなスイッチ)を入れる
- 漏電遮断器(電気が漏れたときに自動で切れるスイッチ)を入れる
- 安全ブレーカー(部屋や回路ごとのスイッチ)を1つずつ入れる
1つずつ入れるのは、どの回路で落ちるのかを見分けるためです。
漏電遮断器が入れてもまた切れてしまう場合は、漏電(電気が本来の通り道から漏れている状態)のおそれがあります。その場合はブレーカーを切ったままにして、管理会社に連絡してください。
分電盤から焦げくさいにおいや変な音がするときも、入れ直さずに連絡です。賃貸の分電盤や配線は大家さん側の設備なので、直すのは自分の仕事ではありません。
なぜ落ちたのかを探したいときは、自宅だけ暗いときにブレーカーが落ちた原因を探す考え方が使えます。
水だけ出ないとき|切り分けと、水の確保

水だけ出ないときは、「どこまで出ないのか」「水をどう確保するか」「戻ったあとにどう使うか」の3段階で考えると整理しやすくなります。
水が出ない範囲を切り分ける
電気はつくのに水だけ出ないときは、範囲の狭いほうから確かめましょう。
- 家のほかの蛇口も出ないか。一部だけなら、その場所の止水栓(トイレや洗面台の給水管の途中にある、水を止める栓)が閉まっていないかを見る
- 家中どこも出ないなら、近所の様子、建物の掲示、水道局の断水情報を見る。東京なら東京都水道局、ほかのエリアはお住まいの水道事業者のページで確認できる
- 地域は平常で、建物だけ出ないなら、共用のポンプや受水槽の不具合が考えられるので管理会社へ
飲み水とトイレ用の水を確保する
断水が長引きそうなら、飲み水とトイレ用の水を分けて考えるのも大切です。飲み水の量は、農林水産省の家庭備蓄の資料に目安があります。
飲料水として1人1日1リットル、調理などを含めると3リットル程度あれば安心で、備蓄は最低3日分。これを2人暮らしに当てはめると、3リットル×2人×3日で18リットル、2リットルのペットボトルなら9本です。
浴槽にためた水は飲まずに、トイレを流すなどの生活用水に回しましょう。水洗トイレが使えないときの簡易トイレのつくり方は、政府広報オンラインの案内にあります。
何をどこまで備えておくかを考えるなら、停電・断水に備えて最低限そろえたい道具の考え方が参考になります。
水が戻ったあとの使い始め
水が戻ったら、すぐに使い始めないでください。政府広報オンラインによると、水道が復旧した直後は水が濁っていることがあり、最初は十分に水を流してから使うよう案内されています。
濁りが続くときは、飲用や洗濯を控えて水道局に確認しましょう。
管理会社に連絡する場面、待つ場面|賃貸の線引き

賃貸では、建物の設備は自分のものではありません。「連絡する」「待つ」の線をはっきりさせておくと、動きが決めやすくなります。
- 連絡する:エレベーター・共用灯・オートロックなど共用部が止まった/地域は平常なのに、建物だけ水が出ない/分電盤のブレーカーが戻せない、焦げくさい
- 待つ:近所も停電している、近隣も断水している(地域全体)。管理会社に連絡しても復旧が早まるわけではないので、送配電会社や水道局の公式情報を見て待つ
- 早めに相談する:暑さ寒さで体調に不安がある、電気で動く医療機器を使っている。管理会社ではなく、自治体の窓口や主治医、緊急のときは119へ
そのうえで、いますぐできる次の一手があります。管理会社の緊急連絡先を、いまのうちにスマホの連絡先に登録しておくことです。
停電するとインターネットでの検索がしにくくなるので、連絡先は検索せずに開ける場所に置いておくと動けます。
やってはいけないこと
良かれと思った行動が、かえって危険になることがあります。
- 焦げくさい、またはすぐ落ちるブレーカーを、確かめるために何度も入れ直す
- 避難などで家を離れるのに、ブレーカーを入れたまま出る(通電火災のもとになる)
- 停電中の明かりにろうそくを使い、その場を離れる
- 停電中に、発電機やバーベキュー用の炭を室内で使う(一酸化炭素中毒のおそれがある)
- 配管が壊れている疑いがあるのに、トイレに水を流し続ける
- 冷蔵庫を何度も開けて中を確かめる、またはにおいだけで食べられるかを決める
- 公式でない情報だけで、復旧の見込みを決めて動く
「ここから先は待つ・任せる」と決めてしまえば、かえって気持ちが楽になります。
判断の目安と、今日できる一手
- 近所も暗いなら地域の停電。ブレーカーには触らず、送配電会社の情報を見て待つ。食品の目安は、扉を開けない場合で冷蔵約4時間・冷凍約1〜2日
- 停電のあとだけ水が出ないのは、建物のポンプが止まった可能性がある。管理会社に連絡して、水は1人1日3リットル×3日を目安に確保する
- 漏電遮断器がまた切れる、焦げくさいときは、切ったまま管理会社へ。直すのは自分の仕事ではない
ここまで読んでいただければ、いざというときの見るところは押さえられています。今日できるのは、管理会社の緊急連絡先をスマホに登録することと、住んでいる建物の給水方式を管理会社に聞いておいて、結果をメモしておくことです。
急に「おかしい」と感じたときの記事は、「すぐ確認」の記事一覧にまとめています。

