朝の支度中、洗面台の蛇口を締めてもわずかに水がにじんでいる。「これ、自分で直していいのかな」と一瞬手が止まる。でも、管理会社に電話するほどでもない気がして、結局そのまま出勤する。そんなことはないでしょうか。
この記事は、賃貸の不具合を一つずつの「はい/いいえ」でたどっていくと、今の症状が「自分でOK」「自分でOKなことが多い」「管理会社へ」のどれに当てはまるかが分かる、という作りにしています。上から順に、あなたの状況に近いほうへ進んでみてください。
先に触れておくと、消耗品の交換や通常の使用による傷み(経年劣化)は、原則として貸主の負担とされています。直したら損になるのでは、と身構えなくても大丈夫です。
我が家の場合:正解は「まず聞く」だった
築20年を超える賃貸マンションに10年以上住んでいると、小さな不具合にはそれなりに出くわします。
いちばん迷ったのは、洗面台の蛇口がポタポタ止まらなくなったとき。パッキン(蛇口内部のゴム部品。水を止める役割)の交換で直りそうだと分かったものの、「自分で触って壊したら弁償になるのでは」という不安が先に立ちました。
結局、管理会社に連絡してみたら「パッキンくらいならご自身で交換していただいて構いませんよ」と言われ、拍子抜けした記憶があります。
逆に、北側の洗面所の壁に小さなカビが出たときは、自分で市販の漂白剤を使って落としましたが、あとから「壁紙の素材によっては変色するので、先に相談してほしかった」と言われたこともありました。

どちらも、正解は「まず聞く」でした。聞いてみるだけで、判断がずっと楽になります。
判断フロー:3つの「はい/いいえ」で自分でやっていいかが決まる
賃貸の修理、自分でやっていい? 判断フロー
症状は「消耗品の交換」で直りそうですか?
✅ 自分でOK
電球・蛇口のパッキン・換気扇のフィルターなど、決まった部品を同じものに取り替えれば直るタイプです。
見た目や跡が気になるだけの、表面の軽い補修ですか?
🟠 自分でOKなことが多い
画鋲やピンの穴、壁の軽い汚れなど、通常の使用の範囲とされることが多い症状です。
水が止まらない・ドアが閉まらない・壁に大きなひびなど、設備や構造に関わりますか?
🔵 管理会社へ
自分では触らず、写真とメモを残して連絡を。判断に迷うだけの場合も、まず管理会社に聞けば大丈夫です。
残りはたった3つの問いです。上から順にたどると、今の不具合が「自分でOK」「自分でOKなことが多い」「管理会社へ」のどこに着地するかが見えてきます。
質問1:症状は「消耗品の交換」で直りそうですか?
電球・蛇口のパッキン・換気扇のフィルターなど、決まった部品を同じものに取り替えれば直るタイプかどうかです。
- はい(交換すれば直る消耗品)→「自分でOK」へ
- いいえ(交換だけでは直らなそう)→ 質問2へ
交換すれば直る消耗品なら、自分でOKに着地することがほとんどです。
質問2:見た目や跡が気になるだけの、表面の軽い補修ですか?
画鍺やピンの穴、壁の軽い汚れなど、生活に支障はなく見た目だけが気になる範囲かどうかです。
- はい(見た目だけの軽い補修)→「自分でOKなことが多い」へ
- いいえ(生活に支障が出ている、広がっている)→ 質問3へ
質問3:水が止まらない・ドアが閉まらない・壁に大きなひびなど、設備や構造に関わりますか?
- はい →「管理会社へ」に着地。自分では触らない
- いいえ(それでも判断がつかない)→ ここは無理に決めず、まず管理会社に聞くだけで大丈夫です
設備や構造に関わるなら、自分では触らないほうが安全です。
「自分でOK」に着いた人へ

電球、蛇口のパッキン、換気扇のフィルター、網戸の張り替えなど、決まった部品を同じものに取り替えるだけの作業が当てはまります。
型番は本体のラベルに書いてあることが多いので、写真を撮ってホームセンターで見せれば確実です。
うちも型番をスマホで撮って持って行ったら一発で分かりました。ただし、蛇口の本体ごと外す必要があるなど、思ったより大掛かりだと感じたら、ここで止めて質問3の側へ進んでください。
「自分でOKなことが多い」に着いた人へ
国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドラインでは、画鍺やピンの穴は「通常の使用」の範囲として、借主の負担にならないケースが多いとされています。
ただし、壁のカビはうちのように素材を確認せず漂白剤を使うと変色することがあるので、カビの状態を見極めて判断する考え方を見てから、先に管理会社へひとこと伝えておくのが安心です。
「管理会社へ」に着いた人へ
写真とメモだけ残して、自分では触らずに連絡するのが安全です。
うちでも引き戸の動きが急に重くなったことがありましたが、レールの掃除で改善しなかったので管理会社に伝えたら、建具自体の歪みだったことがあります。無理に自分で調整しなくてよかったと、今でも思っています。
不具合の緊急度がつかめないときは、「今日中か、週末でいいか」を整理する考え方を先に見ておくと、気持ちの余裕が変わるはずです。
連絡先の使い分け:管理会社・業者・相談窓口
| 連絡先 | こんなとき | いい点 | 気をつける点 |
|---|---|---|---|
| 管理会社 | 賃貸なら原則ここが最初 | 指定の業者を手配してくれることが多い | 対応が早いとは限らない |
| 業者(直接) | 管理会社に連絡しても対応が遅いとき | 症状を見てその場で判断してもらえる | 勝手に手配すると費用トラブルになることがある |
| 相談窓口 | 費用負担や退去時の精算で納得がいかないとき | 第三者の立場で相談できる | すぐに解決するものではない |
賃貸で自分から業者を呼んでしまうと、費用のトラブルになることがあります。
費用負担や退去時の精算で納得がいかないときは、消費者ホットライン(188)や住まいるダイヤル(住宅リフォーム・紛争処理支援センター)でも相談できます。業者選びで迷うことがあれば、初めて業者に連絡するときに知っておきたいことも参考になるでしょう。
契約書とセットで知っておきたいこと

あわせて知っておくといいのが、2020年に改正された民法(607条の2)の考え方です。借主が自分で修繕できるのは「貸主に通知しても相当期間内に対応がないとき」や「急を要するとき」に限られるとされています。
つまり基本は「まず管理会社に伝える」が先です。条文はe-Gov法令検索でも確認できます。
うちの場合も、契約書を改めて読み返したら「消耗品は借主、設備故障は貸主」と明記されていて、それだけで判断がかなり楽になりました。
心配な場合は、賃貸借契約に借家人賠償責任保険がセットになっていることが多いので、契約時の書類を確認しておくと安心です。
やってはいけないこと
判断に迷ったときほど、次の3つはやってしまいがちです。あとから直しにくくなることが多いので、先に頭の片隅に置いておいてください。
- 設備や構造に関わる不具合を、自分で分解して直そうとする
- 壁紙やカビを、素材を確認せずに漂白剤や強い薬剤で処理する
- 迷ったまま連絡せず、状態が悪化するまで放置する
どれも「よかれと思って」やってしまいやすいことばかりです。少しでも不安があれば、動く前に一度連絡してみてください。
よくある質問
Q. 自分で直して失敗したら、費用は全部自分持ちですか?
消耗品レベルの範囲を通常の使い方で直そうとした結果であれば、大きな問題になることは少ないです。不安なら、直す前に管理会社にひとこと伝えておくと安心です。
Q. 契約書が手元になくて確認できないときは?
管理会社に「これは借主負担ですか」と聞くだけで十分です。契約書を探す前に、電話やメールで聞いてしまうほうが早いことも多いです。
迷ったら、最初の質問に戻れば大丈夫

もし途中で分からなくなったら、いちばん上の「消耗品の交換で直りそうか」に戻ってみてください。全部を今日で判断しようとしなくて大丈夫です。気になっている箇所の写真を1枚撮るところから、次の一歩が軽くなります。
暮らしの「どうしよう」を整理したくなったときは、判断に迷ったときの入口ページもあわせてどうぞ。

