地震のあとと台風のあとでは、最初に見る場所が違います。地震は、揺れでガスの配管や電気の配線、機器が傷むことが心配で、台風は、切れた電線や水の入り込みが心配だからです。
この記事が扱うのは、揺れや風雨がおさまったあとに「家の中を、何から、どこまで見るか」です。停電や断水がいま続いているときの動き方は別の記事に任せて、ここでは見る順番と、賃貸で「自分で見る範囲」と「事業者・管理会社に連絡する範囲」を整理します。
地震のあと・台風のあと|見る順番の比較
| 順番 | 地震のあと(原因は揺れ) | 台風のあと(原因は風と水) |
|---|---|---|
| 1 | 火を消す。熱器具のプラグを抜く | 外の切れた電線・飛来物には近づかない |
| 2 | ガス:においを確かめる。出なければメーターの復帰 | 電気:水に濡れた配線・分電盤・家電は使わない |
| 3 | 電気:分電盤と焦げくささを見る | 雨漏り・窓まわり:天井のしみ、吹き込みを見る |
| 4 | 水:見える水漏れ。集合住宅はトイレの前に管理会社へ | ガス機器:炎や音がいつもと違えば使わない |
| 5 | 建物:ヒビ・傾き・ドアや窓の開閉を見て、写真に残す | 外まわり:屋根・雨どい・外壁は地上から見て、写真に残す |
並べ方の考え方は、「火災・爆発・感電のように、被害が一気に広がるものを先に見る」です。ヒビや雨漏りのように、自分では判断しきれないものは、見て記録するところまでにして、あとは管理会社や専門家に任せます。
この順番は、ガス・電気・下水道などの各機関の注意点を、被害が広がりやすい順に並べ替えた当サイトの整理です。
地震のあとに見る|火の始末→ガス→電気→水→建物
地震では、揺れで配管や配線、機器が外れたり傷んだりしていないかを、危険の大きい順に見ていきます。一つの段階で「危ないかも」と感じたら、次に進まずそこで止まりましょう。
まず、火を消してプラグを抜く
揺れがおさまったら、ガス機器の火を消し、使っていた電気器具のスイッチを切ります。アイロンやドライヤーなどの熱器具は、火災の原因になりやすいため、プラグをコンセントから抜いてください。
これは、東京ガスネットワークや東京電力パワーグリッドが案内している最初の行動です。
ガス:においがするときと、ガスが出ないとき
ガスは、においの有無で分かれます。
- においがする:火・換気扇・電気スイッチに触れない。可能ならガス栓を閉め、窓を開けて換気し、屋外からガス事業者へ連絡します。元栓を閉めるのが難しければ、無理せず外へ出てください
- においはしないが、ガスが出ない:震度5相当以上の揺れを感じると、ガスメーター(マイコンメーター)が自動でガスを止めます。ガス漏れがないことを確かめてから、自分で復帰させられます
都市ガスの復帰は、政府広報オンラインの案内では次の手順です。
- すべてのガス機器の使用を止める
- メーターで赤いランプの点滅を確かめ、復帰ボタンのキャップを手で左に回して外す
- 復帰ボタンを奥まで押し、ランプの点灯を確かめたら手を離す
- 3分ほど待ち、赤いランプの点滅が消えたら使える
復帰ボタンを押した直後の3分以内にコンロなどを使うと、マイコンメーターがガス漏れと判断して、また止めてしまうことがあります(経済産業省)。マンションでは、メーターはメーターボックスの中にあります。
3分待っても点滅が消えない、操作がうまくいかないときは、ガス事業者に連絡してください。LPガス(プロパン)は手順が違うので、政府広報オンラインの案内を見てください。
ガス機器の周りも、使う前に見ておきましょう。機器の変形や破損、ガスの接続具の外れ、排気筒の外れや凹み、給気口のふさがりがないかを目で確かめ、異常があれば使わずに、ガス事業者や管理会社に点検を頼んでください(東京ガスネットワーク)。
手順3:水漏れは「見えるしみ・水たまり」だけ見る

電気設備に異常がなければ、地震のあとも電気は届き続けます(東京ガスネットワークの案内)。分電盤(ブレーカーの箱)を見て、スイッチが落ちていないか、コンセントまわりから焦げたにおいや火花が出ていないかを確かめましょう。
ブレーカーが落ちているときの戻し方は、停電・断水が起きたときの動き方にまとめています。ここで止める目安は2つです。
- コンセントが濡れている、焦げくさい、火花が出た:通電させず、ブレーカーを切ったまま管理会社に連絡する
- 漏電遮断器が入れてもまた切れる:漏電のおそれがあるので、切ったままにして管理会社に連絡する(政府広報オンライン)
もう一つ、気をつけたいのが通電火災です。消防庁によると、地震火災は電気に起因するものが特に多く、停電から電気が戻ったときのように、地震の直後ではなく時間がたってから起こることもあります。
家を離れて避難するときは、ブレーカーを切ってから出てください。
水:見える水漏れと、集合住宅のトイレ
水まわりは、キッチン・洗面所・トイレ・浴室の床と、天井に、しみや水たまりがないかを見ます。配管の中までは見えないので、自分でやるのは「表に出ている水のサインを探す」ところまでです。原因を探して配管に触る必要はありません。
ただし水が出ていても、トイレを流してよいとは限りません。東京都下水道局によると、配管などが傷んでいると、汚水が逆流したり、傷んだ所から噴き出したりすることがあります。
集合住宅では、下の階の家に汚水が逆流することもあるため、まず管理会社に問い合わせるよう案内されています。大きな地震のあとは、管理会社の案内が出るまでトイレの水を流すのを待ち、使えない間は簡易トイレを使うのが安全です。
水が出始めたときは、最初は濁っていることがあります。政府広報オンラインでは、復旧直後は十分に水を流してから使うよう案内されています。水が出ない、止まったときは、停電・断水が起きたときの動き方を見てください。
また、水を流したときだけ下水のようなにおいがするなら、排水トラップの封水(排水管の中にたまって、下水のにおいを止めている水)が揺れで切れただけのこともあります。この場合は封水切れの確認の仕方が近い話です。
建物:ヒビや傾きは「見て、記録して、任せる」

壁や窓まわり、玄関ドアに、新しいヒビやズレがないかを見ます。ここで大切なのは、見たものを自分で「大丈夫」「危ない」と判定しないことです。
国土交通省が公表している「木造住宅の地震後の安全チェック」は、傾きやひび割れなど4つの項目を目視で確認して、住み続けてよいか、専門家に相談したほうがよいかを見分けるものです。
ただし、対象は木造の戸建て住宅です。同じ資料でも、大きな揺れのあった地域では、住み続けられるかどうかを一般の方が判定するのは難しい、とされています。
賃貸マンションでは、建物の安全判断は管理会社やオーナーの側が行う領域なので、居住者は見て記録し、案内に従うのが基本です。
気になる箇所は、片付けや修理の前に写真に残しましょう。政府広報オンラインの撮り方の目安は、次のとおりです。
- 家の外は、なるべく4方向から撮る(浸水したときは、深さも分かるように撮る)
- 家の中は、被災した部屋ごとに全景を撮り、被害箇所は寄って撮る
- キッチンや洗面台などの住宅設備、家電の被害も撮っておく
- 撮影日が分かるようにしておく(自治体の案内にある、日付がわかるように撮る方法)
この写真は、自治体のり災証明書を取るときや、保険を請求するときに役立ちます。賃貸の居住者が申請できるか、必要な書類は何かは、お住まいの市区町村で確認してください。
保険は、地震による損害は火災保険では補償されず、地震保険(火災保険に付けて入る保険)の対象になります(日本損害保険協会)。自分の家財の保険にどこまで付いているかは、保険証券で確かめてください。
台風のあとに見る|電線→電気→雨漏り→ガス機器→外まわり
台風では、まず風雨がおさまってから動きます。地震と違って、被害の中心は、風で切れた電線と、入り込んだ水です。
外の電線と飛来物には近づかない
台風の強風で、樹木や看板などの飛来物が電線を傷つけ、断線することがあります。切れて垂れ下がっている電線や、電線に触れているものには、絶対に近づかないでください。
もし見つけたら、地域の送配電会社に連絡しましょう。関東なら東京電力パワーグリッドです。ほかのエリアの方は、お住まいの送配電会社の同じようなページで連絡先を確かめてください。
電気:水に浸かったものは使わない
一度水に浸かった屋内配線や電気製品は、漏電などの原因になるため使わないよう、東京電力パワーグリッドは案内しています。浸水した地区では、電気を使う前に連絡するよう呼びかけられています。
賃貸では、分電盤や配線は貸主側の設備なので、濡れた形跡があれば、通電させずに管理会社に連絡してください。
雨漏りと窓まわり
天井や壁のしみ、窓のサッシまわりの水たまりを見ます。見える範囲で、写真に残すところまでが自分の役割です。
雨漏りは時間がたつほど広がるので、見つけたら早めに管理会社に連絡しましょう。屋根や外壁の修理を、居住者が自分で業者に頼む場面ではありません。
ガス機器:炎や音がいつもと違わないか
台風や水害のあとは、ガスコンロの炎の大きさが不安定になったり、燃える音が大きくなったりすることがあります。普段より炎が大きい、燃える音が大きい、点火しにくいと感じたら、ガスの使用を控えましょう。
水害で機器が浸水したときも、使わずに、販売店・メーカー・ガス事業者に点検を依頼してください。
外まわりは、地上から見る
屋根材のズレ、雨どいの外れや詰まり、外壁のヒビ、窓やサッシの破損を、地上かベランダから見える範囲で確かめます。屋根に上る、はしごを使うといった作業は、自分ではやらないでください。
「保険で無料修理」と訪問してくる業者
台風のあとは、「火災保険を使えば自己負担なく直せる」と勧誘する事業者に注意が必要です。国民生活センターは、請求期限が迫っているなどの勧誘をうのみにせず、安易に契約しないよう呼びかけています。
保険金の請求は、申請サポートの会社に頼らなくても、加入者自身でできます。不安に思ったときやトラブルになったときは、消費者ホットライン「188」で、最寄りの消費生活センターを案内してもらえます。
見つけたら、誰に連絡する?|賃貸の連絡先早見
ガスのにおいがする
連絡先 ガス事業者(すぐに。管理会社への連絡はそのあと)
ガスが出ない、メーターが復帰しない
連絡先 復帰の手順を試してから、ガス事業者へ
切れた電線、電線に触れている木や看板
連絡先 地域の送配電会社(近づかない)
焦げくさい、濡れた分電盤・コンセント、戻してもすぐ落ちるブレーカー
連絡先 管理会社(ブレーカーは切ったまま。浸水したときは、電気を使う前に送配電会社にも)
水漏れ、天井のしみ、雨漏り、トイレや排水の不安
連絡先 管理会社(トイレは案内が出るまで流さない)
壁のヒビ、傾き、ドアや窓が動かない
連絡先 管理会社・オーナー(写真を添える。居住の可否は自分で決めない)
家財の被害、り災証明書がほしい
連絡先 加入している保険会社/市区町村(片付ける前に写真)
「保険で無料修理」と訪問業者が勧誘してきた
連絡先 その場で契約せず、消費者ホットライン188へ
ふだんから、ガス事業者・管理会社・保険会社の連絡先を、スマホに登録しておくと動きやすくなります。停電するとネットでの検索がしにくくなるためです。
賃貸の設備の線引きに迷ったときは、賃貸で自分が直していい範囲の考え方を下敷きにしてください。
やってはいけないこと
良かれと思った行動が、かえって危険になることがあります。
- ガスのにおいがするのに、換気扇や電気のスイッチを入れる、火をつける
- 復帰ボタンを押した直後の3分以内に、コンロなどを使う
- 濡れたコンセントや、水に浸かった家電に、確かめるために通電する
- 漏電遮断器が何度も切れるのに、入れ直しを繰り返す
- 避難するのに、ブレーカーを入れたまま家を出る
- 管理会社の案内が出る前に、集合住宅でトイレを流し続ける
- 片付けや修理の前に、被害の写真を撮らずに処分する
- 余震が続くなかで、ヒビの入った壁や傾いた家具の近くに長くとどまる
- 屋根や高い所を、脚立やはしごで確かめに行く
- 訪問してきた業者に、その場で保険の申請サポートを頼む
迷ったら自分で判断や作業を続けず、危険な場所から離れて、ガス事業者や管理会社などに連絡してください。安全が確認できるまでは、復旧や片付けを急がないようにしましょう。
まとめ|順番に見れば、慌てなくていい

- 地震のあとは「火の始末→ガス→電気→水→建物」、台風のあとは「電線→電気→雨漏り→ガス機器→外まわり」の順に見る
- ガスのにおいがしたら、スイッチには触らず窓を開けて、ガス事業者へ。においがなくてガスが出ないときは、マイコンメーターを復帰させる(3分待つ)
- 焦げくさい、濡れている、ブレーカーがすぐ落ちるときは、切ったまま管理会社へ
- ヒビや雨漏りは、自分で判定せず、片付ける前に写真に残して管理会社へ
すべてを完璧に調べきる必要はありません。見る順番を決めておけば、必要なところは押さえられます。
今日できるのは、ガス事業者・管理会社・保険会社の連絡先をスマホに登録することと、ガスメーターの場所(マンションならメーターボックス)を一度見ておくことです。
急に「おかしい」と感じたときの記事は、「すぐ確認」の記事一覧にまとめています。

